MIRU2020の若手プログラムに参加したので忘れないうちに振り返ってまとめておきます。
MIRU若手プログラムは、学生を中心とした若手の研究者の交流企画です。やる内容は毎年独自の企画が設定されていて、今年はプレゼンテーション(プレゼンバトル)でした。
近年では、若手の育成も兼ねた企画が多いので、個人としても非常にためになります(かかる労力はそれなりに大きくて大変ですが。。。)
参加時の私の状況
私のMIRU若手プログラムの参加は2018年札幌のと合わせて今回で2回目になります。
なるべく毎年参加したいと思ってますが、どこまで参加しても許されるのか悩ましい齢になってきたのが気がかりです。
今回はcvpaper.challengeのCVPR2020サーベイへの参加と博論の最終審査のために博論修正の締め切り、本業の進捗報告などを抱えており、完全に難易度ルナティックでした。まだ息があって本当に良かったです。
私がこんな状態だったので、今回はなるべく自分で仕事を抱え込み過ぎず(個人プレーに走らず)、メンバーの方々と分担してうまくチームをまとめられるか、が課題でした。
グループのプロジェクトについて
プロジェクト始動時期について
今回の企画は、グループでのプレゼンテーションということで、CVPR2020、ICLR2020論文から一本読んで内容をプレゼンとして紹介するという企画でした。
メンバーは委員の福井さんをメンターとして私とM2の方3名、M1の方1名という構成でした。研究で時系列を扱ってるメンバー構成という感じでした。積極的に意見も言ってくれるし、自分から動いて下さる方が多く、頼もしいメンバーでした。
開始は約一ヶ月前の6/26でした。Slack上でグループ分けがなされて、私はグループAのリーダー役を務めることになりました。どうやら一番経験値のある人が各班のリーダーとして抜擢されてるようです。
準備期間は明らかに足りませんでした。この企画なら2ヶ月は必要だったかと思います(この期間内にしっかり仕上げてきた他班は本当にすごいと思います)
振り返ると、進め方を工夫する必要もあったかと思います。
プロジェクトの進捗過程
- 6/26 プロジェクト始動、slackでの挨拶、論文選定のための調査・提案開始
- 7/2 第一回MTG:顔合わせ・論文選定(14本くらいから第三候補まで選定)
- 7/6 第二回MTG:選定論文の読み合わせ会(各自読んできて疑問点について議論→失敗)
- 7/11 第三回MTG:品川から選定論文の論文紹介(内容についての知識すり合わせ)、役割分担割り当て議論
- 7/15 第四回MTG:関連研究の調査報告、スライドの進捗状況、発表者・スライド作成の割り当て変更
- 7/18 全日本CV勉強会で選定論文が紹介されてビビる
- 7/20 第五回MTG:初期スライド完成、マージして内容を議論、発表スクリプトアウトライン作成
- 7/25 第六回MTG:各自で修正したスライド、発表構成について議論、発表スクリプトを作成(宿題)
- 7/29 第七回MTG:事前に発表スクリプトを基に発表練習
- 7/31 第八回MTG:発表練習
- 8/1 MIRU若手プログラム当日:山崎先生の講演を受けてスライド修正と発表練習
若手プログラム発表当日の結果
"Retina-Like Visual Image Reconstruction via Spiking Neural Model"について発表しました。 (発表スライドも後日載せると思います)
内容としては、ハイスピードなモーションを手軽な(省電力な)装置で撮影するために、スパイクカメラという輝度をスパイクに変換する特殊なカメラを用いてSpiking Neural Networkと組合わせて高精度な画像再構成を行う手法の提案です。
バトルの結果としては敗北しました。6チーム中3位までにも入っていませんでした。エフォートは十分取ってもらってたかと思いますので、それでも負けたのは進め方がまずかったのだろうなと思います。
審査員の方からのコメントとしては、説明が込み入ってきた時にどこの話をしているのかが分からなくなったという点がまずかったとのことです。
質問は、カラー画像には使えないのかというlimitationについての質問が1点、評価指標についての質問が2点ありました。
カラー画像についての質問は想定していたので答えられましたが、評価指標については調査が手薄、というか手を抜いたのでうまく答えられませんでした。発表では「この指標はこの分野でよく使われる」みたいな話が発表者から出てしまいましたが、これ自体はおそらくマイナーな手法で、リファレンス画像が無いために著者らが仕方なく設定した手法だと思われます。(論文はメンバーに読んでもらいましたが、よくわからなかったと報告されてから、「まあそこまで重要ではないし、だいたいの気持ちがわかれば良いか」とそのまま放置してしまいました)
発表がうまく伝わらなかったのもあると思うのですが、珍しい指標だったから目を引いてしまう可能性についてもっと考えておくべきでした。モデルの説明に重点を置きすぎて足元がおろそかになっていました。
考察と反省
発表の改善点
- 今回は手法を重点的に説明するため研究背景を簡略化したのですが、簡略化しすぎました。ハイスピードモーションの撮影がどれだけ難しいか、問題設定の前提を最初に詳しく聴衆に見せるべきでした。他班の上位陣はここがうまかったように思います。
- モジュールの説明はアニメーション(説明の進度に応じて順番に処理の動きが見えるよう)にすべきでした。聴衆はおそらくどこを説明してるのか途中でわからなくなってしまったのだと思います。オンライン発表ではポインタを使いにくいというのもあり、今回は発表時のアニメーションと説明の時間的なラグも気になるという点もあったので、どちらも控えましたが、今となってはせめて後者を使う方がましだったかなと思います。 端的に言えば時間がないことを言い訳に妥協してしまったというのが敗因かなと思います。
- スライドのクオリティについて。これは私が指摘しないとまずかったですが、結果の表を論文からそのまま貼り付けてあったのはまずかったです。自分も自分の研究発表ではまずやらないですが、論文紹介くらいだと手を抜きやすいポイントで自分もよくやるので、注意が働かなかったですね・・・
- 口頭発表の練度について。我々はせっかくの機会だしということで経験値を優先して複数人で行ったのですが、逆に発表の難しさを上げてしまったかと思います。ページめくりをする人と発表者は同じ人1人の方が発表の難易度は低かったと思います(一人の労力は上がってしまいますが)。また、我々には発表練習のための時間が全然足りませんでした。メンバーの皆さんも、本来なら1週間程度時間をかけて発表練習の練度を上げたかっただろうと思いますが、おそらくスクリプトなしでは読めなかったのではないかと思います。これはスライドの作り方にも問題があり、スライドがうまくガイドにしきれなかった点が課題として挙げられます。他班は発表者の決め方や、発表練習など含め、どのような進捗状況だったのかが気になるところです。
準備の進め方について
- 今回は作業をうまく分担することを念頭に置いていたのですが、担当の分け方が少し甘かったかもなと思います。グループ分けの最大の利点はエフォートを分担できるところですが、スライドづくりや発表は最終的に一人がまとめた方が統一感が出るので、最後まで分担し続けるのは良くなかった可能性があります。むしろ、今回手薄だった関連研究・評価指標の調査に人手と時間をもっと費やすべきだったかもしれません(でもそれは「プレゼンテーション」という企画の主旨からずれてないか?という疑問があり、今回私はこの方向性を選択しようとは思ってませんでした)他の班はどうやっていたのかが気になります。
- プレゼンテーションの技術について前提を共有すべきでした。最低限の原理原則はありますが、私も自分の中でそれが絶対的なものだとは思ってなかったので、強制することはあまりせず、大部分ではつくってきてもらった元のスライドを活かす方向で改善案を提案して、納得できたら取り入れてもらう形をとってしまいました。これが余計な混乱を招いたと思います。解決策として、分担してスライドをつくるなら、せめてプレゼンについての最低限の資料を最初に共有して読んでもらうべきだったと思います。スライドをつくってもらって「違うそうじゃない」を繰り返す試行錯誤はある程度必要と思いますが、原理原則については則っておいた方が無難です。私もアドバイスとして原理原則と個人の意見をごっちゃにして修正案を出してしまった面があるので、一度前提を共有する機会をつくるべきでした。そうすれば、「これはP.○○の原則に反している」と言えば、言われた方も素直に納得できたと思います。
やっておいて良かったこと
- どの期間にどれくらい忙しいかを事前に聞いていた
- 一度論文の内容について自分がまとめてメンバーに共有した
- 分担作業は個人の負担としては多少楽だった(クオリティとのトレードオフがある)
- メンバーがどのような意見をもっているか割とちゃんと逐一聞けた(独りよがりになり過ぎなかった)
- 著者に分からない点をメールでちゃんと聞いた(2回目は返ってこなかった)
今回の反省として今後のために備えておくこと
- スライド作成時のチェックリストをつくろうと思います。いちいち頭で考えてるとどうしても抜けが出ることが今回分かったので、今後はなるべく脳死でチェックできるようにします。
- 何が起きているのか分かりやすくするために、アニメーションにする労力を厭わないこと(今回のわかりにくさは、アニメーションを厭わず導入すればだいたい解決した問題だった)
MIRU若手プログラム当日(グループのプロジェクト以外の話題)
山崎先生のチュートリアル講演について
当日は午前中に自己紹介と東大の魅力工学で有名な山崎先生にチュートリアル講演がありました。
早速スライドが公開されたようなので、こちらにも貼っておきます。
www.slideshare.net
基本的には、聴衆に認知負荷をかけないように気を遣うという主旨でした。
私も日ごろ指導教員の先生方からボコボコにされてきたので分かりみが深かったです。個人的には、以下の点が自分でまだ改善できるなと思ったのでまとめておきます。
- イントロでは聴衆の引きを意識する(問いかけ系の導入)
- 研究背景の説明として、他人の意見を借りる(出来事や、統計情報などを利用して聴衆の納得感を引き出す)
- 図表の凡例はプロットと結ぶか、プロットに沿えるように配置する(論文の載せ方とは変える)
- 書いてあることと説明することのギャップをなるべく小さくする(書いてあることはもらさず説明する。書いてないことを説明しない)
- 見えない情報を作らない(アニメーションで順々に表示していくと負荷を感じる人もいるらしいので、たぶん処理のフローを説明するようなときも半透明で表示して必要な場所だけハイライトする方式にした方が良い)
特に最後の「見えない情報を作らない」という点については新鮮でした。私は見えない情報があるとむしろ「おっこれは何か隠し玉があるな」とワクワクして集中して聴けるので、逆なんですよね。むしろ情報が全部見えてると退屈で眠くなってしまいます。一般的にはそうでもないようなので気を付けたいところです。
各班の発表について
全体的にレベルが高くてぶったまげました。興味深い論文ばかりで面白かったです。個人的な感想も載せておきます。
- B班:問いかけ型の導入でとても引き込まれました。流石Arakiさんのチームやって感じでした。GANでデータ拡張なんでしないのみたいなことが気になり過ぎて少し説明聞き逃しちゃったのが個人的にもったいなかったです。録画が欲しい。
- C班:発表された論文の中では一番興味にマッチしてて面白かったです。こういうことに使えるのではないか、みたいな議論もあって納得感があり良かったです。コンテンツが盛りだくさんで少しどこにポイントを置いて話を聞けばいいのかが途中ちょっとついていけませんでした。ただそれは、発表資料が事前共有されてれば問題なかったかなとも思います。
- D班:ちょっと最初の方でスライドのクオリティが気になりました。中身の説明はポイントを押さえて下さっててだいたい理解できました。論文自体の話になりますが、手法はまあ良く聞く感じの組合せっぽいので適用するタスクがうまくはまってたのだろうなあと思います。
- E班:前提となるところの知識がとても丁寧で驚きました。手描きの図みたいなものもあり、一番説明のためにスライド作成の労力を割いてたのではないかと思います。ただ、導入が少し長すぎた面はあるかなと思います。この分野の研究動向の発表としては非常によくまとまってたと思います。私はこのチームに投票しました。
- F班:優勝はこのチームでした。導入がとても丁寧で引き込まれるので、一般向けの説明でも通じそうな気がします。ただ、私は途中あまりの認知負荷の低さに居眠りしてしまったので全体については正当な評価はできないです(申し訳なし・・・)2倍速で聞いてたらたぶんちょうど良かったと思いますが、これはまあ私が想定聴衆でなかったからだろうなという感想です(連日の無理がたたってたのもありますが)
懇親会含む、全体その他の話について
今回は、前回参加した2018の若手プログラムと比べると、あまりslackの流速が速くなかったなあと思いました。むしろあの世代にノリが良い方が多過ぎるのかもしれません・・・
懇親会では、適当にグループに分かれてCOVID-19の影響の話とか、研究環境のこととか、D進の話とかについて話をしてました。会う学生だいたいD進希望者で驚きました。これは、学生さんを若手プログラムに突っ込めばD進してくれる説がありますね・・・?(気づいてしまった顔)
同世代の方々とも色々な四方山話を話せてとても楽しい時間を過ごせました。またここに来れるように頑張りたいものです。