あのD進から10年を振り返る

本記事は研究コミュニティ cvpaper.challenge Advent Calendar 2025の6日目の記事です。

古来より「桃栗三年D十年」*1とはよく言ったもので、人を博士まで育てるには長い時間がかかります。しかし、「D十年」は転じて「叶う年」とも読むことができ、D進してから十年目は何かが叶う年だと言っても過言ではないでしょう・・・そんな妄言が事実になる日を楽しみに日々を過ごしています。こんにちは、品川です。

気づけばD進してから10年が経過していました。年の瀬も近いことですしここはひとつ、1年と言わず10年分を振り返ってみようかなと思います。ただ駄文だけではご覧いただくのに申し訳ない&普段から好き勝手D進芸を披露してお目汚しをしているので、心ばかりのお礼お詫びとして、これからD進する・するかもしれない・してしまった方々に向けて心構え的なおススメTipsもところどころで述べておこうと思います。

2015年4月、D進ことはじめ

2015年4月1日D進したことを宣言

東北大学における学部時代、週6日練習をする柔道部に所属して主務も務め、俗に言うガクチカを十分に保持しておきながら知ったことかとD進してしまいました。誰に望まれたわけでもなく、相談したわけでもなく、親には事後報告です。あの時の私の行動力は神がかっており、誰も私を止められませんでした。

なぜD進したのだろうかと自分に改めて問いかけてみると、一言で言えば心躍る冒険をしたいという気持ちが強かったのだろうなと思います。大学柔道部時代に首を怪我して柔道選手としては再起不能になり、自分の熱を向ける矛先の不在にくすぶっていたこと、ちょうど深層学習が日本でも流行り始めた段階でこの先面白くなりそうな予感があったこと、記号創発システム論にも出会って画像と言語の紐づけがコミュニケーションのプロセスの中で生じる過程をAIでもやってみたいという研究としての興味の対象ができたこと、学部修士を通して身に着けられると期待したスキルがあまり身に着いた感じがせず、もうより良い環境で訓練を積みたかったことなど、様々な材料が重なりました。対して修士就活はよくわからん企業を付け焼刃で調べていきなり自分の将来を預けるのが不安というのがあり、あまりワクワクしなかったのです。D進後の世界というものはどうなるか不確実過ぎて見当がつきませんでしたが、なんとかやれるだろうという根拠のない自信だけはあり、これから迫りくるであろう冒険にワクワクしていました。

博士課程の洗礼

博士課程の研究室として重視したのは学生がたくさんいて生き生きしているかどうかでした。学部修士は少人数の研究室だったのもあり、博士課程から在籍していたNAIST知能コミュニケーション研究室では輪講やゼミ、勉強会だったりレクリエーション的な催しのある研究室生活は新鮮で楽しいものでした。誤算だったのは、やはり研究室教育というのは当時学生の私が期待していたものではなかったこと、私が身の程知らずで特に生活習慣がよろしくなく、体調を崩しがちだったことです。

研究室教育への期待と現実のギャップ

東北大学柔道部では最上級生が幹部として部の運営を担う仕組みを採用しており、自分や部の仲間も、部員一人一人の成長戦略を考えて全体の練習メニューを組み、先輩の技を後輩にいかに伝えていくか、効率的な練習方法は何かを追求していくことをしていました。七大学柔道部というのは伝統的に15名vs15名の団体戦という特殊な試合ルールを採用しており、部員獲得が死活問題になります。ゆえに、一人一人を大事に、強く成長させるという考え方があります。私もこの信条を持つ一人です。

当時学生の私が期待していた研究室教育にもそのようなものを期待していたところがあったのですが、実際にはこれといったカリキュラムがあるわけではなく、教員から学生に技術を伝授する仕組みや先輩学生から後輩学生に技術を伝達する仕組みは弱いなと感じていました。しかし、間違いなく当時の知能コミュニケーション研究室は先輩学生が後輩学生の面倒をみるという仕組みづくりではアカデミア最高峰にあったのではないかと思います。勝ち負けが明快に決まる柔道競技と異なり、対戦相手がいないこともあればチーム戦にならず個人競技に近い営みになりがちな研究・大学研究室教育にあってここまでの仕組みを構築したボスの手腕には舌を巻いたものの、一筋縄ではいかないのだなと思う気持ちと、まだまだ伸びしろがあるのではないかと思ったのが正直なところです。

こうして研究室教育というものに色々な想いを積もらせ始めたのが、D進を趣味として発現するに至る下地となっていた気がしています・・・ 研究だけでなく研究室教育という営み自体にも興味が湧き、その一環として、色々と研究のテクニックや心構えなどを趣味で調べるようになりました。

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ソースとしては、研究室で教えてもらった資料や、twitterで流れてきた資料、学会や勉強会の資料をストックしていったという感じです。 これを毎年行っている研究室のM1向けの勉強会を機に自身の経験も加えてまとめて、「AHC-Lab M1勉強会 論文の読み方・書き方」を作って公開してみたところ、予想以上の反響があり、色々な方に名前を覚えていただくきっかけになり嬉しかった記憶があります。特に大学の先生方が研究室の学生さんに「これを読むべし」と紹介してくださったらしく、2,3年後に学会や勉強会で初対面の学生さんにお会いした際に「あの資料を最初拝見して学びました」と言ってもらうこともたびたびありました。ちょっとした有名人になった気分で気恥ずかしさも感じつつも、こうして喜んでもらえるならやって良かったなと思いましたし、研究室教育に寄与するにはこういう方法もあるのだなと視野が広がりました。

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そういえば留学してないなとトビタテに応募して留学しようとしてトラブルでトビタテないかもしれないのを教員に助けてもらったりして留学したりもして充実した研究生活を送りながら、帰国後要件になる論文誌と博士論文をなんとか提出し、公聴会が終わった後は空が黄色くて「これが幸せの色か・・・」となったのは今でもよく覚えています。思えば好き放題させていただいてしまったという感じはあり、この辺のご恩は後世に報いていければと思っています・・・

おまけ:指導教員という存在を学生はどう捉えていけば良いか?

指導教員と学生の関係とはどのような関係だと考えて、あるいは想像してらっしゃるでしょうか?

  • コーチとプレイヤー?
  • 上司(マネージャー)と部下?
  • ジムのパーソナルトレーナーと顧客?
  • コンサルと雇い主?
  • テナントオーナーとそのテナントで働く自営業者?
  • 雇用者と被雇用者?

実際には多様な関係性が重なり合って存在しており、時と場合に応じて目まぐるしく変化したりもします。私がD進した当時はどう思っていたかというと、すごい研究室というのは、入ったら教員から色々指示を出されて、研究を通じたトレーニングをしてもらえると思っていました(運動部のイメージ)。しかし現実はそうではなく、自分が何かをして教員に相談しに行くと何かアドバイスをもらえるという仕組みであることが多いように思います。適切なタイミングで適切な粒度の相談をするスキルも重要でした。私は当時これが壊滅的に苦手で、この10年で一番伸びたのもこのスキルかと思います。

学生の立場から見ると、教員が自分をどう扱いたいのか気になるところですが、ぶっちゃけわからないことが多いです。私も学生の時はよくわかりませんでした。自分が教員になってからは、自分の先生方は学生の自主性をできるだけ促すために、時にはコーチとして、またある時には上司として…と学生の状況を見て使い分けてくれてたんだなということが分かってきました。

自主性というとなんかとりあえず自分で色々手を動かせば良いのかという話になりがちですが、ここでの自主性というのは研究プロジェクトの最終責任の所在が自分にあることを自認して行動することなのではないかと思っています。もう少しわかりやすく言うと、自身の研究プロジェクトにおいては自分がマネージャーであり、教員はそのプロジェクトを成功させるためのリソースだと考えるということです。この考えに立つと、自分が実行可能な行動というのは予想以上に広いです。例えば以下のような行動がありえると思います。

  • 自分のやりたい研究について、教員のコネをつかって詳しい人に弟子入りを志願する
  • 教員にボールがわたっているタスクについて、進行が遅ければ適宜問い合わせる、期日に間に合わなければ合意と見なして先に進むと宣言しておく
  • 自分の研究領域について、教員がアドバイスできるように教員に自分の研究分野の動向や技術をレクチャーするつもりで研究報告や相談をする

昔、ある先生が「学生が教員を教育す(るつもりでいる)べき」という投稿をXでされて「教員なんだからちゃんと教育をしろ!学生に甘えるな!」とプチ炎上したことがありましたが、学生の立場に立つと本当に教員を教育するつもりでいるべきだと思います。自分のプロジェクトにおいて教員をリソースとしてうまく使う上で、教員の知識が博士学生の研究トピックに追いついてないのならば教員にレクチャーをして有益なコメントがフィードバックに出てくるように訓練するのもあり得る話です。

※こういったことはある程度経験を積んできた博士学生だからできることで、学部修士くらいだとまだわからないことが多すぎて難しいのではないかと思います。学部修士くらいの方は一通り研究を一周回して経験を積むのが先決だと思っています。

上記のようなことが当たり前になってくると、基本となるコミュニケーション方法にも変化があります。代表的なのは、人に質問やアドバイスをしたりする際に、自分なりの意見や仮説としての選択肢を持つようになることです。これは相手になるべく即応してもらいやすいようにする工夫としてだけではなく、自分で仮説を立てて立証するプロセスが入るという点で、考える訓練になります。この辺のスキルはどこに行っても役に立ちますし、主体性のある人間として評価してもらいやすくなるので、D進するしないに関わらず、学生の間に自分で意識して練習しておくのもおススメだと思います。

身の程知らずで体調を崩しがちだった件について

若かったし四六時中研究できるぞ、といって効率化をおろそかにしていたのは反省すべき点でした。 ちゃんと研究にかけてる時間を計測するとかすればもっと成果がちゃんと出たでしょうに・・・ 学生時代の研究生活はそれ自体も自分が高いパフォーマンスを維持するために色々試しながら自分を学ぶ良い機会だったのだなあと思っています。 この辺は2022年のAdvent Calendarで書いた「メタ視点の研究効率化Tips(研究生活のデザイン)について」で詳しく取り上げたので、ご興味あればぜひ。

snowman-88888.hatenablog.com

ちなみに助教になってからは既にだいたい毎日死にそうだったので、逆に生活習慣はまあまあ自然と修正されました(寝不足になると即死ぬことが分かっていたので・・・)

cvpaper.challengeとの出会い

MIRU2018で札幌に行った時のMIRU若手プログラムで片岡さんに出会い、異分野サーベイで八木さんと同じチームでポスターを一緒に作ったりしていたのが今思うとcvpaper.challengeと接点を持つきっかけになった気がします。cvpaper.challengeは2015年5月に既に始まっており、後日片岡さんに誘っていただいて参画しました。

sites.google.com

私自身はあまり貢献できた感がないのですが、cvpaper.challengeは面白い取り組みだと思っていてこれまでお付き合いをさせていただいてきました。 研究室という環境は世界が閉じがちで思考や行動の幅が狭くなりがちですし、問題を抱えたときに解決する手段が限定されてきてしまいます。他の研究室の学生や先生と交流することで、自分の諸々が研究室にロックインされてしまうのを防ぐことができます。そういう意味では研究室単位を束ねた村のような単位で協働する仕組みも重要だと考えていて、cvpaper.challengeはまさにその趣旨に合致していました。

2021年には村山さん、山本さん、Qiuさんらと一緒にTransformerメタサーベイを実施し、一つの大きな転機になりました。当時はVision Transformerが出たばかりでCV界隈でも注目が集まっていたので、色々な方々に見ていただけましたし、学会でもチュートリアルをさせていただく機会がありました。

www.slideshare.net

ただ、まさかVision Transformer入門を書くというところまでいくとは思ってなかったです。学生も指導しながら執筆していてなかなかしんどかったですが、結構熱を入れて書くことができたのでとても良い経験になりました。

gihyo.jp

同時期にはコンピュータビジョン最前線Winter2021で「ニュウモンVision and Language」を執筆する機会に恵まれました。これからはVision and Languageの時代だということで、Vision and Languageの仲間が増えるならと書いたものでした。学生さんの指導にも使う予定でしたが、残念ながら全員対話システム研究をはじめてしまったのでその面ではあまり役に立たなかったのが若干無念でした笑。でもcvpaper.challengeや他の研究室の学生さんで、Vision and Languageをこれからやってみたいということで読んでくれたという方が結構いらっしゃったので、書いて良かったなと思います。

www.kyoritsu-pub.co.jp

助教時代の話

博士をとってしばらくはポスドクをして自分の将来の研究の基礎を作るつもりでいたのですが、私の博士取得見込みが決まったのと同時期あたりに助教の先生が異動されたのも大きな転機でした。2020年8月くらいに突然「お話があります」とボスに呼び出されて「次は君の番だ」というわけです。「助教・・・正直1,2年早いぜ・・・」と思っていましたが、博士まで育てていただいたご恩もあるので受けることにしました。9月に博士をとってから、これからは強化学習が必要になると思い、強化学習苦手の会を発足して強化学習を学んでいたのが懐かしいです。この会は実態としては毎週2回程度Discordで開催するもくもく会となっており、強化学習苦手を自称する様々な方にご参加いただいて大いに盛り上がり、12月には「強化学習苦手の会 Advent Calendar 2020」を開催させていただきました。当時私は言語生成の強化学習を主に触れていて、それに関連する記事をいくつか執筆しました。

adventar.org

言語生成の強化学習、結構いいとこいってると思うんだけどなんで流行ってないんだろうな~とは当時思ってたり話したりはしていました。特に気にしていたのはOpenAIが2019年にGPT-2をPPOで学習する論文を、2020年にGPT-3をPPO+オフラインで学習する論文を出していたことです。「強化学習苦手の会 Advent Calendar 2020」の拙記事でも取り上げていました。当時はGPT-3のAPIが出てきたりHyperCLOVAが出てきた時期でもあり、GPT-3の強化学習が跳ねると研究室レベルで扱える話じゃなくなる上に対話システム研究もやべーのでは?と思いはじめていました。当時は嫌な予感しかなかったので2021年4月に研究室に配属された学生さんらには「今は対話システムよりVision and Languageをやった方がいいんじゃない?」と勧めていたのですが、その思いは叶わず、2022年11月にChatGPTという黒船に乗り込まれてうわ~~まあこれはこれで面白くなってきたな!とか思っていたのが懐かしいです。その学生さんらはChatGPTの威風に負けず、ちゃんと修了してそれぞれの道で元気に活躍してらっしゃいますし、教員として最低限の役目は果たせて良かったです。自分自身、学生さんを通してアイデアを実現可能な研究につなげる思考力も培われた気がします。教員はイイぞ。

cvpaper.challengeでは山本さん綱島さんといった早稲田大森島研の方々と仲良くさせていただいていて、その縁で紹介いただいた大島遼祐さんとVision and Language+対話システムの研究をしたのも楽しかったです。これはエージェントが人間(or 別のエージェント)に質問をして画像中の物体当てゲームをするのですが、人間側が間違えて不正解になった場合にどこが間違えているのか当てるというタスクです。昔から、実世界のVLMは失敗して謝ったところでそのまま許されるわけではない、失敗した状態から頑張って復帰してタスクを成功に導かないといけないと思っていて、そういう枠組みをVLMでやれば自己改善ができるようになっていくよね、というねらいがあり、個人的に面白い研究でした。今だとReasoningの文脈でこの辺も高度にこなせちゃいそうですね。

arxiv.org

また、Stable Diffusionが出てきたあたりで画像と言語の結びつきを多様性と言う観点で評価できないかというのがあり、指導学生さんの岡本さんとやった話が個人的に面白かったです。これはtext-to-imageにプロンプトを突っ込んで、出てきた画像の多様性をVendi Scoreという指標で測り、その多様性を別のモデルで予測できるかを調査したものです。研究として議論するために限定的な実験条件下だったのですが、画像と言語の結びつき度合いを測るのにポテンシャルは感じていたので、どこかでまた取り組みたいなと思っています。

www.jstage.jst.go.jp

それから大きな変化として、助教時代のハードワークの中で、趣味という趣味がことごとく消滅し、コロナのせいでNAISTのトレーニングルームも消滅した結果として、積み重なった想いの集積として、D進が趣味のおじさんが誕生してしまいました。グヘヘ、D進はイイぞ。

SB Intuitions時代の話

ボスが定年退職されるにあたり研究室が解散することは決定していたので、自分も他の大学に行くか企業に行くかを考えていたのですが、最終的にSB Intuitions株式会社に転職しました。

理由は下記の通りなので、ご興味あればどうぞ。端的に言うと、「企業経験があった方が研究や学生指導に生きそう」、「計算資源欲しい」、「良いVLMを作れば社会貢献できて博士が社会の役に立ってる感をアピールできる→学生がいっぱいD進する」あたりが理由です。

note.com

大学教員であり続けるというのは困難な道です。今の大学教員というのは、一人で何役もこなすスーパーマンのような方々の集まりです。研究と指導と事務処理を同時に進める忙しさは院生時代から肌で感じていたのですが、実際に体験してみるとその忙しさは予想の3倍でした。いま大学教員をされている先生方には頭が下がるばかりですし、当時指導させていただいた学生さんには十分な成果につながる指導を提供できなかったことに申し訳なさを感じています。自分にはまだまだ足りないものが多いです。

そこで一つ気になっていたのが、一旦アカデミアの外に出ることです。私の当時の所属研究室のボスも、若い頃に民間企業に所属した経験があり、そこでの経験や視点がアカデミアに戻った後でも役に立っていると話していました。幸いなことにVLMは民間企業でも需要が高いので、アカデミア一本よりも産業界も経験してみる方が将来的に大学教員としてやっていくにしてもプラスになるだろうという予感がありました。

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アカデミアから民間に移った理由はいくつかありますが、雑に箇条書きにすると

  • アカデミアの世界しか知らないことにリスクを感じたから
  • 情報系のポストが増えていて、新しいことにチャレンジして失敗しても教員として戻れる可能性がそこそこありそうだから
  • 大量のGPUをぶん回したい気持ちが高まっていたから
  • 日本の中でも最高の教育を提供する研究室に所属して教育の可能性や限界を思い知ったから。結局教員が多忙過ぎるし、教育がスケールしないのが問題(私が成長させたいと思う「できない学生」への教育コストは学生の能力が低いほど際限なく高まる)
  • 品川の目指すものは「一人でも多くの人が幸せなD進生活を営むこと」なので、教員として活動を続けるよりも基盤モデルにベットする方が見込みがあると感じているため

とこんな感じです。

SB Intuitionsに移ってVLMチームを立ち上げてからは忙しなくてしばらく目が回る日々が続いていたのですが、最近は社員もチームの仲間も増えてきて賑やかになり、VLMの開発体制も整っていて色々新しいことにも手を出し始めているところです。毎日とても充実しています。VLMのニーズというのも色々な方から相談いただいているので、しっかり社会実装まで貢献できるように頑張りたいと思っています。

結婚します

私事ですが、12月(今月)に結婚することになりました。理由は色々あるのですが、SB Intuitionsの同僚には妻帯者が多く、単純にうらやましくなったというのと、生成AIの進展がすさまじすぎて自分が情熱を傾ける対象がAIに奪われた時に生きる気力なくなりそうなので、奥さんと家庭を築いていくことで自分の世界が広がって楽しそうだなと思ったからというのが大きなところです。

せっかく東京に来たというのもあるので、2025年の4月に意を決して東京都のマッチングアプリ(AIマッチングシステム「TOKYO縁結び」)を始めました。東京都のマッチングアプリはお見合いの場所が女性側の利用する駅周辺優先で決まるので、お見合いをしに毎週末東京の各地を回って東京の地理を知る良い機会にもなりました。皆さん良い方ばかりで毎回楽しくお食事をさせていただいて、東京の暮らし悪くないな・・・と思ってしまいました。

彼女には5月に出会いました。マッチしたお相手の中では一番プロフィールがぶっ飛んでいたので最初は何かの罠であることを懸念していたのですが、会ってみるとだいぶ考え方とか価値観とか合いそうな方で、冒険心をくすぐられる形で結婚を前提にお付き合いを始めました。毎週土曜日に色々なところに一緒に行きまして、いい夫婦の日にプロポーズをしてアクセプトされた次第です。

ちなみに東京都のマッチングアプリは真剣交際後に結婚するだろうと思ったタイミングで成婚退会することになっており、100組目くらいの時期に成婚退会しました。 成婚率を採択率と考えると東京都のマッチングアプリの採択率は200名(100組)/25000名=0.8%です。マッチングアプリ始める際に成婚率とか全然見てなくて後から見て唖然としました。成婚できてよかった~~~ でも実際のところ、このアプリ自体まだ開始して間もないからあまり成婚数が出てきてないだけで、登録されている方は基本的に面倒な書類を提出するくらいのリテラシーは最低限持っている方々だと言えるので有象無象の民間マッチングアプリよりは良い方に出会いやすいのではないかと思っています。一応成婚させてもらったので宣伝でした。

ちなみに以下のサイトを見ると現在の成婚数が確認できます。今見ると212名(106組)/28000人=0.76%ですね、登録者数がいつの間にか3,000人くらい増えてますね・・・乗るしかない、このビッグウェーブに・・・

www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp

AIマッチングシステム「TOKYO縁結び」の実績

これからはD進はイイぞからの結婚はイイぞの二段構えでやっていきたいと思います。私は今36歳ですが、D進してからの人生は未だ収束する様子がありません。これから迫りくる新たな冒険にまだまだワクワクできそうです。今後ともよろしくお願いいたします!

*1:学部4年修士2年博士3年+どこかで浪人留年をして10年くらい

AppleのFerret-UI

こんにちは、品川です。実益を兼ねた趣味として、気になった話題をブログにまとめる趣味を始めようと思います。今回はAppleのFerret-UIです。

Ferret-UIの概要

Ferret-UIはMobile Web UIのためのMLLMです。記事にとりあげられていたのを見かけました。注目が集まっているようです。

www.itmedia.co.jp

gigazine.net

原著はこちら。

arxiv.org

要点:

  • Ferret(Appleが以前に発表したMLLM)がベース
  • 画像をサブ画像に分割して処理する
  • 訓練データ:250K
    • iPhoneやAndroidのUIスクリーンショットを利用
      • Androidのは既存のRICO datasetのサブセットを利用
    • Spotlightという先行研究 (Googleが出したMobile UI Understanding論文)のタスクを流用。会話的なQAペアに
      • screen2words: 画面に映っている内容(どんなことをできるUIなのか)の要約
      • widgetcaptions: 画面上のオブジェクトの機能の説明文を生成
      • taperception: tappability(オブジェクトがタップ可能かどうか)の認識
      • 自然言語からコマンドの位置をあてるタスク(Command Grounding)は本論文では別途Grounding tasksとして作っている模様
      • 上記は全てGPT-3.5 Turboで作成
      • Elementary Tasks: 画面上のUI要素についてのタスク群。
        • reffering系(ここではbboxで指定されたものを答えるタスク):OCR, icon recognition, widget classification
        • grouding系(指定されたものをbboxで出力するタスク):widget listing, find text, find icon, find widget
      • Advanced Tasks:LLaVAを参考にVisual Instruction TuningのデータをGPT-4を使って作成

Advanced Tasksの作成方法(論文Fig4より引用)

Advanced Tasksの作成方法(論文Fig4より引用)

  • 計算資源:Ferret-UI-baseは8xA100で1日、Ferret-UI-anyresは3日で学習できる
  • 評価方法:
    • Public Benchmark from Spotlight
    • Results on Elementary UI Tasks
    • Results on Advanced Tasks

感想

  • Appleの人が書く論文はしっかりしたものが多いので好き
  • GPT-4でデータ作成は一般的な感じがあるが、GPT-4一辺倒でも偏りが出てしまう懸念はありそう?

参考:Ferretについて

github.com

  • 思想的にはKosmos-2と同じで、物体の位置情報をbounding boxで吐き出せるように位置情報に特化した学習がされている
  • 学習済みモデルには7Bと13Bがある
  • Ferret-Benchというベンチマークも提案しているので要チェック

NAIST助教を退職してSB Intuitionsで働き始めました。

こんにちは、品川です。大学教員になって約3年半、ボスの定年退職に伴い、異動することにしました。 新しい所属先はSB Intuitionsです。民間企業ではありますが、研究機関登録もされていて科研費もそのまま移すことができます。まだ学生の投稿中の論文誌が残ってたりするのでありがたいですし、色々と面白いことができそうでワクワクしています。

アカデミアから民間に移った理由はいくつかありますが、雑に箇条書きにすると

  • アカデミアの世界しか知らないことにリスクを感じたから
  • 情報系のポストが増えていて、新しいことにチャレンジして失敗しても教員として戻れる可能性がそこそこありそうだから
  • 大量のGPUをぶん回したい気持ちが高まっていたから
  • 日本の中でも最高の教育を提供する研究室に所属して教育の可能性や限界を思い知ったから。結局教員が多忙過ぎるし、教育がスケールしないのが問題(私が成長させたいと思う「できない学生」への教育コストは学生の能力が低いほど際限なく高まる)
  • 品川の目指すものは「一人でも多くの人が幸せなD進生活を営むこと」なので、教員として活動を続けるよりも基盤モデルにベットする方が見込みがあると感じているため

とこんな感じです。

NAISTは素晴らしい環境でした。学生から教員になってみて、教員の先生方は思った以上に学生のことを考えて施策を練ってくれてることが分かりましたし、事務の方々の処理能力の高さには毎度頭が下がるばかりでした。食堂やコンビニの方々、清掃員の方々はよく挨拶をしてくださいましたし、NAISTで過ごす生活は快適そのものでした。

およそ9年間のNAIST生活で学んだことを挙げればきりがないので、また次の機会に少しずつ書いていこうかと思います。これまでありがとうございました。今後の品川の活躍にご期待ください。

「頑張らない学生指導」を頑張ろう

こんにちは、品川です。大学教員になって約3年、今の所属はボスの退官に伴い、今年度で終了になる予定なので、備忘録としてぽつぽつと反省をまとめていこうと思います。今回は大学教員としての仕事の仕方についてです。

せっかく大学教員になるのだから、学生ファーストで少しでも学生に良い経験を積んでもらって能力を伸ばして成果もたくさん出して修了してもらいたい、あわよくばD進してもらいたいという思いでここまでやってきました。結論から言うと道半ばで、ようやく大学教員の呼吸にも慣れてきたという感じですが、思ったような方向に結果は伴わなかったので大学教員の難しさを思い知りました。

機械学習のニューラルネットワークと異なり、ナマモノの人間ニューラルネットワークを相手にする仕事なので、なかなか思うようにはいかないものです。それなりに楽しい期間でしたが、全体としては反省点が多かったです。

一番の反省点は学生指導を頑張り過ぎたこと

学生ファースト(ここでは学生の能力を伸ばし、研究成果をあげて未来の選択肢を広げること)を達成することと、学生指導にどれだけ時間を使ったかは同値ではありません。直接的な指導は教員の可処分時間に制約されるので、限界もあり、あまり効率が良くないです。また、指導の分だけ学生が伸びるわけでもありません。

私が2021年4月に初めて学生を持った時の方針は、最初のうちにエフォートを割いて研究テーマを早めに決定できれば後々楽ができるという考えでいましたが、結果的に学生は私が強みを出せない領域で研究を始めてしまい、まあ学生ファーストだよなと学生の意向を汲んだ結果、班全体の歯車が狂って学生も無駄に苦難の道を歩むことになり、あとからあとからトラブルが増えてごりごり私の可処分時間が削られました。

やはり学生のテーマというのは、学生の興味関心もある程度は重要ですが、学生のレベルと研究室の事情(研究費の出せるプロジェクトに紐づけられるかどうか、指導教員が強みを出せるところか、など)を鑑みて決定すべきで、学生ファーストを達成するにはまず教員ファーストでなければならないという悲しい現実に直面しました。

実のところ、当時私は学生の研究テーマを私の意向に合わせて制約させてもらう予定だったのですが、大学教員になりたてで、初めて学生を持つということもあり、ボスの介入も受けてこの状況に持っていかれた感じです。ここでボスは私との約束を反故にしているので、今になって思うとここはボスに色々交渉する余地のある場面でしたが、博士後期課程時代の恩義もあったし、なんかあったら助けてくれるかあと少々楽観的に受け入れてしまいました(結果ひどい目にあった)

ちゃんと自分がプロとして仕事を遂行する上では譲ってはならないラインがあり、時には上司に対してNoを言わなければならないことを学んだ次第です(私は体育会系出身なのでNoを言いづらい性分、そしてボスは私が断れないマンだったのを分かってて、私はうまくしてやられた気がします。悔しみ・・・)

頑張らない学生指導をするために

単純に手を抜いただけでは、結局勝手に成長できる学生が成長できるだけで、そうでない学生を見捨てることになります。そうなっては自分が教員になった意味がありません。私が教員になったのは少子化の中にあって未だに本国における研究室教育が前時代的な放置と選別に基づいていることに少なからず憤りを覚えていて、それをどうにかできんのかという気持ちがあったからです。

ではどうすることになるかというと、上手に手を抜けばいい、つまり直接的な指導を頑張らなくても最大の教育効果を目指すことになります。

この発想で動けるようになってきたのは2023年3月くらいだと思います(それ以前は地獄を見ていて生きてるだけで手一杯でした・・・)

やってよかったこと

研究班ミーティングを二週間に一回から一ヶ月に一回に減らした

研究班ミーティングはほぼボスが教育してる感を出すためになっていて形骸化していたので、思い切って半分にしました。代わりに、個々の研究の問題解決は個別ミーティング30分/週と、日々研究室に来る学生に声をかけてこまめに解決するようにしました。(必然、研究室に来る学生の方が進捗が良い感じになりましたが、これは致し方ありません。ログインボーナスみたいなものです) 結果、学生が準備に消耗する時間が減ったので進捗ペースが良くなりました。

『卒論・修論研究の攻略本』を読む会

研究の問いの立て方や問題の絞り方にはコツがあり、経験だけでは補えないものがあります。研究のノウハウ本は学生が研究で壁にぶつかっている時に解決のための糸口にもなるので、一通り押さえていてもらいたいのですが、不思議とこういうノウハウ本は読もうという発想にならないようです。学生にとっては半強制的に読む機会があって初めて良さがわかる本というのがあるようです。残念ながら。

研究ノウハウ本の例:『卒論・修論研究の攻略本』 https://www.amazon.co.jp/dp/462794361X

あと、私は学生時から個人的に研究のためのWeb良資料をまとめています(現在もたまに更新してます)

github.com

研究に興味があれば一通り見るだろうという仮定が私の中にありましたが、こちらもやはり、自主的にこれらの資料の中から自分に合うものを探して選べる人は少ないようです。悲しい。

そこで、半強制的に読ませるために読み会を開きました。 『卒論・修論研究の攻略本』は1章が一日分となっています。一日分30~40分でひと段落ずつ音読して読みまわし、一日分を読み終わったら議論20分を行うことを5回分やれば5時間で完成です。

学生からの反応は上々でした。「もっと早く知りたかった」と・・・(これからは自主的に読むんやで・・・)

原稿テンプレートの作成

学生に一から原稿を書かせると壊滅的な文章が出てきて何から指摘して良いか頭を抱えます。ChatGPT時代にあっても論文のように論理的な文章を書くための型や作法を学んでおくのは重要です。

しかし、こういうことはいざ学会原稿を書く段階でないと身に付けようというモチベーションが湧かない問題があります。そこで試して良かったのは、学会原稿の書き方をまとめた原稿を書いたことです。実際の原稿も参考までに置いておきます。

※MIRU2023のフォーマットをお借りしてます。

www.overleaf.com

この論文書き方原稿は勢いで書いたところがあり、決して完璧なものではありませんでしたが、この論文書き方原稿を書いたことで、致命的なコストのかかる指摘や修正は避けることができました。体感だいぶ原稿を読むのが楽だったと感じます。

査読型論文読み会

普通の論文読み会と異なる読み方として、査読者の視点で読むことで論文を書く際にも査読者の視点で論文を書けるような仕掛けをつくりたいと思い、やってみた試みです。 実際のフォームのコピーも参考までに載せておきます。 ※Googleフォームの仕様で編集者ビューを見せるには編集権限を与える必要があるようで断念しました。ご了承ください。

docs.google.com

続けると効果があると思っていますが、これは一回2論文しかできませんでした。 その回は敢えて国際会議のBest paper nomineeを選びました。ツッコミを入れることで、国際会議で評価されている論文が必ずしも隙が無くて完璧というわけではないことを示すことを狙ったものですが、悪くは無かった思います。 将来的には内部査読を学生同士でできるようになってくれると嬉しいなとも思ってますが、博士後期の学生もいないと少々イマイチな感があります。研究室横断でできたら良かったのかも?

やったら良かったこと

サーベイやネタ出し、勉強会をイベント化する

学生に「お前ら助け合えよ~」と言っても自主的に助け合える学生は少ないので、そういう場合はイベントとして設定して半強制的に助け合えるようにする場を仕掛けるのが重要なようです。『卒論・修論研究の攻略本』を読む会では特に重要性を感じました。

一人でサーベイしているとどうしても甘さが出ますが、複数人で肩を組ませてスクワットさせるがごとく、短期的ゴールとして強制的に○本読むことを実行させて、定期的に一本一枚スライド2, 3分くらいで何本か紹介させると歩調を揃えつつ本数を読めるようになると思いました。研究発表では口頭にしろポスターにしろ短く要点を紹介することが求められることがありますが、これは練習しないとできないので、その発表練習にもなるはずです。

また、ネタだしも学生間で組を作り、自由に議論させて1時間後に発表させるというのを繰り返しても良かったと思います。その間教員は横で仕事をしていても良いし、議論に加わっても良いと思います。YANS2023のハッカソンやMIRU2023の若手プログラムはそんな感じで面白いアイデアが出ていたので、もっと研究室でも活かせば良かったなと思います。

修士の学生には、重要技術に馴染んでもらうというのも重要だと思いました。最近は実装が公開されていることも多いので、既存実装で良いので、自分でまず体験して遊んでもらう形の勉強会を開くと技術に対する心理障壁が下がったかなと思います。強化学習や最適輸送を使いこなして欲しい人生だった・・・

まとめ:人間もPromptingが大事

結局何が言いたいかと言うと、人間ニューラルネットワークにもPromptingが大事だってことです。ただ、指示をするだけではうまくいかないことも多いので、最初は場を設けてPromptとするのが大事なのかなと思いました。

※ただ、向かない人もいそうなので上記のような取り組みは原則希望制にした方が良いかもしれない

Slack botとしてChatGPTをお招きしてスレッドに返信してもらう

こんにちは、品川です。

何番煎じかわからないですが、ChatGPTを研究室のSlackに入れたいと思って少し色々といじっていました。とりあえず目的のものはできたので備忘録がてらbot作成についてまとめておきます。

仕様

メイン:

  • botはGASとSlack API、ChatGPT (gpt-3.5-turbo) APIで実装 (GPT-4 API欲しい・・・)
  • botは他のユーザからメンションされた時だけ応答
  • 応答はスレッドに投稿
  • スレッドが存在しない場合はスレッドを新規作成して応答を投稿
  • スレッドが存在する場合は、スレッドの対話履歴を抽出
  • ChatGPT APIは対話履歴を入力として応答文を生成する(スレッドが存在しない場合はユーザの入力のみ)

動作例は下のような感じです。簡単な計算を行ってから会話をまとめてもらう操作を依頼して、履歴が次の発話に継承されているのを確認しました。

動作例:簡単な計算を行ってから会話をまとめてもらう操作を依頼
動作例:簡単な計算を行ってから会話をまとめてもらう操作を依頼

細かい点:

Slack botとGASの準備

基本は下記のサイトに従って進めればOK。
【忘備録】SlackチャンネルにChatGPTを組み込んでみた!【Google Apps Script】 | 情報学部生の気ままなブログ
※ただし、上の記事にあるSlackAppは結局使わないで実装しました(SlackAppでスレッドに送信する方法が調べてもよく分からずハマったため・・・)

OAuth Scopeは以下のBot Token Scopesが必要です。

  • channels:history (スレッドの読み込みに必要)
  • chat:write (応答に必要)
  • users:read (ユーザIDをユーザ名に変換するのに必要)

※更新したらbotの再インストールの警告が出ます。再インストール(Install Appにある「Reinstall to Workspace」)をしてようやく権限が更新されるので注意。

GASでの実装

gist.github.com

これでGASのコードを置き替えて再デプロイすれば動きます。

動かない場合:

  • GAS側の設定
    • 設定の「スクリプトプロパティ」としてopenApiKey, slackBotId, slackBotTokenがきちんと設定されているか
    • デプロイの方法が間違ってないか
  • Slack API側の設定
    • OAuth & PermissionのScopeが反映されているか
    • Event Subscriptionはonになっているか
  • Slack側の設定
    • 「チャンネル名」→「インテグレーション」→「アプリを追加する」でbotを動かしたいチャンネルに登録しているか

感想

有志の方々が先行して記事をまとめてくださってたのでだいぶ助かりました。GASはあまり使い慣れてなかったので良い勉強になりました。とはいうものの、SlackのAPIの仕様で思ったより苦戦しました。 私はまだ諸般の事情でGPT-4に課金して無かったのでgpt-3.5-turboで聞いてみたりしたのですが、SlackのAPIのスレッド周りの仕様についてのWeb上の記事が比較的少ないせいか、結構トンチキな提案をされて逆に振り回されてしまった感じです。結局公式のリファレンスを読むのが一番早かったというオチでした。

参考

GASの利用準備+実装

実装

論文紹介:TISE: Bag of Metrics for Text-to-Image Synthesis Evaluation (ECCV2022)

こんにちは、品川です。この記事は画像生成AI Advent Calendar 2022 14日目の記事です。

adventar.org

ECCV2022の論文をサーベイしていてテキストからの画像生成の評価指標の研究を見つけて面白そうだと思いまして、この機会にまとめてみたので紹介したいと思います。

まとめ自体はspeakerdeckにあげたので、こちらを見ていただければと思います。

最初はてっきりDiffusion系で比較しているのかと思ったらまさかのGANこれくしょんでした。ECCV投稿締め切り当時はまだGANも幅を利かせてたんでしたっけ?隔世の感・・・

読んでみたらちょっともやっとするところもありましたが、テキストからの画像生成の評価はまだまだ手薄で、せいぜいFIDやR-precisionにばかり頼っているところがあるので、希少性が評価されたのかなと思います。

Twitterでも最近話題になっているのを目にしますが、画像生成の評価は今後もますます重要ですね。どんどん盛り上がっていったらいいなと個人的には思います。私の学生さんもテキストからの画像生成の評価関連でぼちぼち学会投稿を狙っているので、楽しみにしていただけたらと思います(適度なプレッシャーをかけていくスタイル)

自己紹介とメタ視点の研究効率化Tips(研究生活のデザイン)について

こんにちは、品川です。
本記事は研究コミュニティ cvpaper.challenge 〜CV分野の今を映し,トレンドを創り出す〜 Advent Calendar 2022の2日目の記事です。

adventar.org

自己紹介

はじめての方へ向けて自己紹介です。品川政太朗と申します。奈良先端大で助教をしています。 大好物はVision and Languageと対話システムです。学生時代は自然言語の対話による画像編集について研究をしていました。今も学生さんと一緒に研究を進めています。

Vision and Languageも対話システムも、近年のGPT-3をはじめとした大規模言語モデルの登場に端を発して大きな盛り上がりを見せている研究分野で、ご存じの方も多いかもしれません。 私は特に、これらの分野の両方にまたがったシステムに興味があります。 Vision and Languageという分野は、画像をはじめとする視覚情報と、自然言語のテキストで表現される言語情報をいかに紐づけて課題を解決するかに関心がある研究分野です。これができるようになると、画像中の情報をテキストで表現したり、逆にテキストを画像で表現したりといったモダリティ間の変換や、画像を理解する手段として言語情報を使う、言語を理解する手段として画像情報を使うといったことが可能になります。 私が特に面白いと思っているのが、画像と言語が一対一対応しないという点です。画像を完全に説明できる説明文はなく、同じテキストでも複数の画像が説明文として適するという場合が存在します。 加えて、画像情報も言語情報も多様性があり、個人や大小の様々なコミュニティによって、画像とテキストがどのように紐づくか・紐づくべきかは異なると考えられます。たとえば、例の和菓子を御座候(ござそうろう)と呼ぶコミュニティで「回転焼き」や「大判焼き」などと呼ぶとユーザから不興を買うと容易に想像できると思います。 このような問題を解決するために、コミュニティに根差してユーザに利用してもらいながらユーザやコミュニティに逐次的に適応する仕組みというのが必要だと考えています。 すなわち、人から指示を受けた機械が、必要に応じて自分から人に確認をしたり、新たに情報を求めたりといった対話のやりとりを通して人と意図を擦り合わせ、人の指示の意味と実世界の意味を結び付ける方法論についての研究が私の研究動機です。 詳しくは、12/17(土)のLanguage and Robotics研究会(zoomにて開催、参加無料)でも話すので、ご興味ある方はぜひいらしてください。

langrobo.connpass.com

私が過去に発表した資料などはこちらから見れますので、ご興味ある方は参考にしていただければ幸いです。

sites.google.com

speakerdeck.com

メタ視点の研究効率化Tipsとは?

さて、早速本記事の本題に入りたいと思います。「メタ視点の研究効率化Tips」とは、「研究効率化Tipsを実践するためのTips」くらいのニュアンスです。 研究効率化Tipsと言うと、新しい便利なツールを使う方法を思い浮かべると思いますが、研究活動は社会的な営みでもあるので、自分をコントロールしたり、他人と協調したりといった要素も重要です(が、この観点は研究室でもわざわざ指導されることがない場合が多いと思います) メタ視点の研究効率化Tipsでは、このような社会的な営みの中での研究生活を充実させることで、研究を順調に進めながら研究生活を楽しめるようになるコツをいくつかお伝えできればと思います。主に学生さんを想定して、研究生活というよりも研究室生活に焦点を当てます。

研究室生活の概要を知って目標を立てる

研究室生活を充実させるためには、まず「研究室生活ってどんな感じで進むの?」という点を理解して、研究室生活を自分の人生に最大限活かす方法について考えるのが肝要です。

①知っておこう:研究室教育は実践の場

研究室教育というのはOn-the-Job Training (OJT)が中心であり、研究指導も研究室生活指導も、最初に体系的なレクチャーを受けられないまま、実践を通して学ぶことになる研究室も多いです(※筆者の聞く限りでは)。 研究室が提供してくれるのは主に、研究する場、研究する人が集まる場や機会、要所要所でアドバイスをくれる教員という存在であり、研究活動がどのようなゲームなのか理解するには自分から積極的に情報を収集する必要があります。

参考:2020.06.01 M1勉強会 論文の読み方・書き方・研究室の過ごし方 P.50

speakerdeck.com

研究というゲームの説明は『卒論・修論研究の攻略本』という本で分かりやすく説明されているので、ぜひ購入して読んでみると良いと思います。

www.morikita.co.jp

研究に対する心構えをより詳しく知るには、以下の本が参考になります。ぜひ調べてみてください。

  • 『妄想する頭 思考する手―想像を超えるアイデアのつくり方』
  • 『独創はひらめかない―「素人発想、玄人実行」の法則』

②知っておこう:研究室生活は転用可能な技術(transferable skills)の塊

研究というプロセスはあらゆる問題を解決するのに汎用的に当てはめることができます。ゆえに大学では学生の問題解決能力を育むために研究というコンテンツを用意しているわけです。研究を一通りこなすのに必要なスキルは様々であり、多くのスキルは他の職種にも転用可能です。将来自分がなりたい職種が研究職でない方でも、どうせ修了して学位を取得するために必要ならば、就職時にスタートダッシュが切れるように研究室生活の中でスキルを鍛えておくか、と思っておくと身が入るかもしれません。

参考:2020.06.01 M1勉強会 論文の読み方・書き方・研究室の過ごし方 P.51

https://files.speakerdeck.com/presentations/f7601b20488a42ba8b94dd5e9d1b26b7/slide_50.jpg プロジェクト炎上について補足*1

参考:2020.06.01 M1勉強会 論文の読み方・書き方・研究室の過ごし方 P.52

https://files.speakerdeck.com/presentations/f7601b20488a42ba8b94dd5e9d1b26b7/slide_51.jpg

③実は裏テーマとして「自分をコントロールする技術の研究」が重要だったりする

研究テーマというのは個々人の能力に応じて様々なテーマ設定が可能なため、実は学生時代の研究室生活において鬼門になるのは個人の数学的素養やプログラミングスキルなどよりも、頑健な研究室生活を送れるかどうかにある、と私は考えています。「頑健な研究室生活」というのは、たとえば研究がうまくいかなかったりショックな出来事があって肉体的・精神的に落ち込んでも大きく崩れない、崩れてもすぐ立て直せる研究室生活を指します。

研究室生活(研究生活)というのはいやらしいもので、凹む機会や体調を崩す機会が日常的にやってくる世界です。 研究がなかなかうまく進まなかったり、自分のやっている研究が他の研究機関から論文として発表されたり、教員からきついコメントをもらったり、様々です。 普通の感覚であれば失敗なんてなるべくしたくないと思いますが、研究室生活では失敗を繰り返しながら成功に近づいていくことになります。 失敗するごとに成功に近づいていると喜ぶのが研究者と呼ばれる人々で、研究室生活を始めた学生さんの中にはカルチャーショックを受けてしまう人もいるかもしれません。

加えていやらしいのは、研究室では研究指導はしても研究室生活指導はあまりしない(忙しすぎてできない?)という点があります。 研究室によってはコアタイムを設けることで学生さんの研究室生活にある程度の制約を設けている場合もありますが、万人に対して同じ施策が有効とはならないので一長一短です。 教員も求められれば研究生活についてのアドバイスはできるものの、究極的には自分に適合する研究室生活は自分で見出していく必要があり、この必要性にいち早く気づけると順調な研究室生活を送れる可能性が高まります。 そう、言うなれば、研究室生活の裏には外に出すことはない裏研究テーマ「自分をコントロールする技術」があると考えると良いかもしれません。 自分をコントロールする技術はこの先研究職になっても他の職種に就いても応用が利く転用可能な技術(transferable skills)として非常に重要なので、そんな意識まるでなかったよ、という方はぜひ意識されると良いかと思います。

裏研究テーマの実践:相対化で自分の強みと弱みを見つける

研究というプロセスはあらゆる問題を解決するのに汎用的に当てはめることができます(ゆえに大学でも教育の一環として学生に研究をさせるわけです)。 もちろん裏研究テーマ「自分をコントロールする技術」を進める方法も、通常の研究と同じように進めることができます。少々異なるのは、自分のために行うことなので、論文として発表する必要はないという点ですね。

さて、研究のプロセスは、調査→仮説と研究計画の立案→仮説の検証→結果の考察に分かれます。「自分をコントロールする技術」について研究する際の調査の秘訣は、相対化です。 相対化とは、他者と比較するということです。え、「自分に適合する研究室生活は自分で見出していく」んじゃないのかよ、と思う方もいるかもしれませんが、自分の中に絶対的な指標を持ち込むのは大変なので、他者と比べて自分が何に興味を持っていて、何を困難に感じずにできるかを見出せると仮説を立てやすいわけです。

研究室には先輩や同期、後輩がいたり、他研究室と交流する機会があれば、雑談の中から何が得意か聞き出したり、進捗報告や研究発表から何が自分と違うのかを観察してみると良いと思います。

私の場合は、「他の学生よりも興味の範囲が広いなあ(広すぎるなあ)」「サーベイが苦にならない(むしろサーベイしすぎる)っぽい」という傾向があると感じていました。これらはよく「勉強好きだけど研究できない人」を揶揄する表現でして、私も自分でそういう面がある点は自覚していて、自分は研究向いてないのでは?、と考えることもありました。 しかし、良い面もあります。たとえば、コンピュータビジョンや自然言語処理、ロボティクスなど様々なコミュニティとつながり、様々な視点から研究を考えることができる点です。

研究という世界は思ったよりもずっと懐が深く、ある面での弱みは別の面だと強みになり得ると思います。 そう思ったきっかけは、自分の興味が広すぎることをボスに相談してみたときでした。ボス曰く「色々な領域に興味を持てるという資質は武器になる。学生の時にはあまり役に立たないかもしれないが、PIになった時にその資質が生きてくる」とのことでした。 このできごとからの学びは、資質・傾向の良し悪しを短期的に判断するのではなく、長期的な視点で活かすには自分を世界の中にどう位置づけていけば良いかを考えていけばいいのだ、ということです。 ある資質や傾向が今は不利でも、状況が変われば、捉え方が変われば、その資質や傾向を活かして強みにできる可能性があるはずです。「自分をコントロールする技術」を研究することは、これらの可能性を見つけていくことにもつながります。

性格診断やストレングスファインダーも役に立つ

自分の傾向を把握する方法として、16Personalitiesのような性格診断やストレングスファインダーも役に立ちます。ぜひ一度やっておくと良いです。

ちなみに私の16PersonalitiesはENFP-Tで、広報運動家です。傾向は好奇心・直感が先に立ち、衝動的。注意点は飽き性、手を広げすぎて収集つかなくなりがちなこと。世が世なら海賊王を目指していそうなアレです。

ストレングスファインダーでは5つの特徴的な資質を見ることができます。私の場合は以下の5つでした。

  • 収集心:知りたがり屋の傾向。
  • 内省:考えることが好きな傾向。確かに、とりわけ思考が自分の内面に向かうことが多いので、人の話を集中して聞くのは苦手な面があります。
  • 学習欲:学ぶことが好きで、結果より学ぶプロセス重視な傾向。
  • 回復志向:問題を解決することが好きな傾向。確かに、自分が成功することよりも、困ってる他者を助けて喜んでもらえることの方が好きです。
  • ポジティブ:基本的に楽天的で、どんな状況にもポジティブな面を探そうとする傾向。

これらの傾向を参考にしながら、自分にはどういう研究スタイルや研究生活が合うのか、仮説を立てていくと良いと思います。

方法論の調査

自分をコントロールする技術を研究する上で、先人が残している方法論は検証候補としてとても参考になります。 常日頃から情報を収集してメモしておくと良いでしょう。 たとえば、Web上で見れる資料だと以下のような資料があります。

www.200kounen-training.com

  • 楽しい研究のために今からできること 〜新しく研究を始める皆さんへ〜

www.slideshare.net

www.slideshare.net

  • cvpaper.challenge 研究効率化 Tips v2

www.slideshare.net

  • 2020.06.01 M1勉強会 論文の読み方・書き方・研究室の過ごし方(再掲)

speakerdeck.com

実は、漫画家の方々が公開してくださっているTipsも研究者を目指す我々に大変参考になります。必要なメンタリティとかかなり近いです。たとえば、大塚志郎先生をご覧になってみると良いと思います。

twitter.com

「from:shiro_otsuka 漫画家志望さんへ」でtwitter検索してみましょう。

自分自身の身体的・精神的体調管理について、予防やもしもの時(体調を崩したり落ち込んだりした時)の対処を中心に調べると良いと思います(研究の効率的な進め方にも関わってくるところです)

  • 体調管理、スケジュール管理とか
  • 心構え、考え方とか

仮説を立てて検証する

良さそうな方法があれば、早速実践してみましょう。 これまでの経験や、性格診断やストレングスファインダーを利用して得た自分の傾向に照らし合わせて、できそうなものから始めても良いと思います。 検証期間は、設けられるなら設けた方が良いと思いますが、無理に用意する必要は無いと思います。 (仮説を立てて検証する方法や期間といったことも、自分に合った方法を見出していくつもりでいると良いと思います。

私の場合は、私は衝動的かつ飽き性な面があるので、とりあえず試して、途中でやらなくなって自然消滅することが多いです。 やらなくなったことに気づいた時が肝心です。「あ~~~なんて私はだめなんだ」と思ってたらそこで終了になってしまうので、「何が原因でダメだったんだろう・・・?」と考察を始めます。たとえば、スケジュールに週に2時間強化学習の勉強をする予定を立てて実践した時に、うまくいってなければ、「その時は別の仕事があった」「疲れて寝てしまった」とかが原因として挙げられるわけです。

ここで立てた予定を止めるという選択肢もありますが、どうしてもやりたいことならば別の方法を考えます。研究で言う提案手法です。 たとえば、「「強化学習の勉強をする」というのが具体的でなく、すぐに行動に移る気が起きなかったので、ページ数を指定してやってみるようにしよう」とか、「一人で行うのは飽き性の私には向かないから、他の人を誘って一緒に勉強会を行って半強制的にでも読む時間を作ろう」といった提案が考えられます。

あまりおススメしないのは、何も改善案を立てずにリトライして同じことを繰り返すことです。少しの工夫で良いので、失敗したら改善案を立てて繰り返していきましょう。改善案が思いつかなければうまくやっていそうな人に聞いてみるのも一つの手です。そのためにも、コミュニティのつながりは広く持っておくと良いと思います。cvpaper.challengeもぜひ選択肢に入れていただけると幸いです。

xpaperchallenge.org

*1:プロジェクト炎上は、自分の研究プロジェクトでも研究室のプロジェクトでも良いですが、締切近いのに間に合いそうになくてヤバイ!くらいの広めの意味です。目標を変更したり、アプローチを変えたり、対応力が求められます